HIGH PERFORMANCE
HOUSE

高性能住宅

全館空調とは?
快適&省エネの秘訣と
メリット・デメリット
を徹底解説

全館空調とは、家全体を1つの空調システムで快適な温度・湿度に保つ仕組みです。部屋ごとの温度差をなくし、どこにいても適な空間を保てるのが特長です。
この記事では、仕組みやメリット・デメリットをわかりやすくご紹介します。

全館空調とは?

全館空調とは、家中すべての部屋を一つの冷暖房で調節する仕組みのことです。部屋ごとにエアコンを付けるより、家の中の温度差が少なくなり、より快適に過ごせます。

 

全館空調は24時間365日ずっと動いているため、室内の温度や湿度、空気が心地よく保たれます。トイレや脱衣所が寒かったり、朝布団から出るのがつらかったり、家に帰ったときにむっと感じたりする悩みを持つ人におすすめです。

 

特にヒートショックという体に悪い温度の変化を防げるため安全に暮らせます。

夏は一定の湿度や温度が保たれることで、熱中症予防にも役立ちます。全館空調は、季節を通して健康に暮らすうえで大切な仕組みと言えるでしょう。

 

全館空調の種類と仕組み

全館空調の種類と仕組み

 

全館空調にはいくつかの方式があり、主に次のようなタイプがあります。

 

空調方式について

空調方式とは、冷暖房された空気をどのように部屋に届けて快適な環境をつくるかという仕組みのことです。主な方式には、ダクト式、床下冷暖房、輻射式の3つがあります。

 

  • ダクト式
    天井裏などに張り巡らせたダクトを通し て、各部屋に空気を送る方式です。1台の空調機で家全体を快適に保つことができます。
  •  

  • 床下冷暖房方式
    床下から温風や冷風を送り出すことで、足元からやさしく室内を冷暖房する方式です。上下の温度差が少なく快適です。
  •  

  • 輻射式(ミックスタイプ)
    床や壁から放射される熱を利用して冷暖房する方式です。風が出ないため静かで、ほこりも舞いにくいのが特徴です。
  •  

    全館空調の動きの流れ

    全館空調は多少異なることもありますが、一般的には次のような流れで動いています。

     

  • 空気をきれいに取り込む
    外の新鮮な空気を取り入れて、フィルターで花粉やPM2.5などを除去し、きれいな空気にします。換気の質が高いほど、室内の空気も清潔に保たれます。
  •  

  • 温度をムダなく調整する
    外の空気と中の空気の温度差をうまく利用して、冷暖房の効率をアップ。省エネにつながります。
  •  

  • エアコンなどで温度を整える
    きれいになった空気をエアコンやヒートポンプでちょうどいい温度にします。換気された空気で室内環境も快適です。
  •  

  • ダクトで部屋に送る
    調整された空気は、床下や天井などにある吹出口から各部屋に届けられます。ダクト内の換気も重要で、メンテナンスを怠ると空気の質に影響します。
  •  

  • 空気を循環させる
    一度使った空気はまた空調機に戻り、一部を外に出しながら、また新しい空気と入れ替えていきます。
  •  
    このサイクルにより、どの部屋も温度差が少なく、一年中快適な空間が保たれます。
    さらに、全館空調における換気の役割は、空気の清浄化だけでなく、健康的な暮らしを支える大切な要素です。
     

    熱交換について

    熱交換器とは換気時のエネルギー損失を抑えることです。熱交換器には大きく分けて以下の2種類があります。 

    種類 特徴 備考
    全熱交換型 温度と湿度を同時に交換する 夏:湿気を抑える

    冬:乾燥を和らげる

    最も一般的

    顕熱交換型 温度のみを交換し、湿気は交換しない 湿度の調整はできない

    匂いが混ざりにくい

     

    全館空調のメリットとデメリット

    全館空調のメリットとデメリット

     

    全館空調のメリットとデメリットについてご紹介します。

    家中を快適な温度・湿度に保てる全館空調は、暮らしをより快適にする設備として注目されています。一方で、導入コストや運用面での注意点もあります。ここではその特徴をわかりやすくまとめました。

     

    全館空調のメリット

     

    メリット 内容
    室内の温度・湿度を快適にキープ 家全体の温度・湿度が一定に保たれ、ヒートショック予防につながる
    部屋の移動も快適 どの部屋も同じ温度なので、移動時の不快感がない
    インテリアがすっきり 各部屋にエアコンが不要で、室外機も1台のみ。見た目が美しい
    きれいな空気が保たれる 換気機能付きで、窓を開けずに新鮮な空気に。PM2.5やウイルスも除去可能
    電気代が抑えられることも 常時運転により電力のムダが少なく、省エネ機能で効率よく運転可能

     
     

    全館空調のデメリット

     

    デメリット 内容
    初期費用が高い 複数のルームエアコンに比べて、導入コストが数倍になることがある
    空気が乾燥しやすい 空気が家中を循環するため、湿度が上がりにくく、加湿器が必要になることも
    急な温度調整がしづらい 局所的に冷やしたり温めたりするのが苦手で、補助機器の併用が必要になる場合も

     

    全館空調は、快適さと清潔な空気環境を保ちやすい一方で、初期費用や乾燥などの注意点もあります。メリット・デメリットを把握し、自分に合うかを見極めることが大切です。

     

    他の暖房システムとの比較

    他の暖房システムとの比較

     

    全館空調を導入する際に気になるのは、やはり他の暖房システムです。

    エアコンや床暖房、薪ストーブなど、代表的な設備について、それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。

     

    暖房・空調の種類 主な特徴 メリット デメリット
    エアコン 冷暖房・除湿・送風に対応 温度調整がしやすい

    導入コストが低い

    部屋ごとに操作・設置が必要

    空調の効かない場所との温度差が大きい

    セントラルヒーティング 一か所で作った熱を家全体に送る暖房システム 温度差が少ない

    風が出ない

    乾燥しにくい

    熱源の選択が可能

    冷房機能がない

    大きな建物では各部屋にパネルが必要

    デザインの調整が必要

    床暖房 床下の温水パイプや電熱線で床から暖める 風が出ない

    寿命が長い

    ランニングコストが低い

    冷房機能がない

    故障時の修理が大変

    メンテナンス(不凍液補充など)が必要

    ガスファンヒーター ガスで温風を出す暖房機器 立ち上がりが早い

    加湿効果がある

    燃料補給不要(ガス栓使用)

    ガス栓が必要

    換気が必要

    ガス代+電気代がかかる

    燃焼時に水蒸気が発生し、結露が起こりやすい

    石油ストーブ 灯油で燃焼する、電気を使わないストーブ 停電時にも使える

    静音性が高い

    乾燥しにくい

    灯油の購入・補給が必要

    換気が必要

    においが気になることがある

    水蒸気で湿度が上がりやすく、結露の原因になることがある

    薪ストーブ 薪を使い炎で暖める。煙突付き 電気不要

    停電時に灯り・調理にも使える

    環境にやさしい(カーボンニュートラル)

    薪の保管・管理が必要

    灰や煙突の掃除が大変

    煙や灰で近隣トラブルの可能性がある

     

    高気密・高断熱住宅との相性

    全館空調は、高気密・高断熱の家でこそ、本来の力を発揮します。
    快適さと省エネを両立させるには、住宅そのものの断熱・気密性能がとても大切です。

     

    高気密・高断熱の場合のメリット

  • 空調効率が高い
    建物に隙間が少ないため、冷暖房した空気が外に逃げにくく、外気も入りにくいため、エネルギーロスが最小限に。効率的に室温を保てます。
  •  

  • 電気代の節約につながる
    断熱性能が高いことで、少ないエネルギーで快適な温度を維持できます。空調機器の起動や停止も少なくなり、消費電力が抑えられます。
  •  

  • 家中どこでも快適
    LDKだけでなく、廊下、トイレ、脱衣所、寝室なども含め、家全体の温度がほぼ均一に。寒暖差によるストレスも軽減されます。
  •  

  • 空気がきれいに保てる
    高性能フィルターと換気システムにより、外気の花粉・PM2.5・ホコリの侵入を防ぎ、家の中を常にクリーンな空気で保てます。生活臭やハウスダストの蓄積も抑えられます。
  •  

  • デザインの自由度が高い
    各部屋にエアコンを設置する必要がなくなるため、壁や室外機の位置を気にせず、吹き抜けやリビング階段などの開放的な間取りにも対応しやすくなります。
  •  
     

    高気密・高断熱ではない場合のデメリット

    デメリット

     

    一方で、一般的な気密性・断熱性の低い住宅に全館空調を導入すると、次のような問題が起こる可能性があります。

     

  • 光熱費が高くなる
    隙間が多く、外気の影響を受けやすいため、空調の効いた空気が逃げてしまい、全館空調が常にフル稼働。結果として電気代が大きく増えるおそれがあります。
  •  

  • 温度ムラが発生する
    断熱性が低いため、部屋ごとに温度差が出やすく、家全体を均一な温度に保つことが難しくなります。
  •  

  • 快適さが損なわれる
    夏は冷えにくく、冬は暖まりにくい場所ができるなど、全館空調本来の快適性が得られにくくなります。
  •  

  • 機器への負担が大きい
    過剰な運転が続くと、空調機器に負担がかかり、故障リスクや寿命の短縮につながる場合もあります。
  •  
    全館空調と高気密・高断熱住宅の相性は非常に良く、むしろ、快適性や省エネ性を最大限に引き出すには、高気密・高断熱住宅であることが前提とも言えます。

     

    以下に、全館空調が特におすすめな方の具体例をまとめた表を掲載します。ご自身やご家族の暮らし方と照らし合わせて、参考にしてみてください。

     

    こんな思いがある方 内容例
    健康への配慮を重視する ヒートショックのリスク軽減、アレルギー物質の除去、カビ・ダニの抑制
    温度差を感じたくない ヒートショックのリスク軽減
    常にクリーンな空気を保ちたい 外気の汚染物質(花粉、PM2.5など)をシャットアウト、室内のホコリやカビの発生を抑制
    乾燥や加湿に配慮したい 過度な乾燥や結露を抑制
    省エネ性を重視する (高気密・高断熱住宅と組み合わせることで)冷暖房のエネルギーロス削減
    住宅性能を最大限に活かしたい 高気密・高断熱住宅のポテンシャルを最大限に引き出せる
    メンテナンスの手間を減らしたい 個別のエアコンを複数台管理するより、一元的に管理できる(フィルターの清掃など)
    すっきりとしたインテリアを好む 各部屋に壁掛けエアコンの室内機や室外機を設置する必要がない
    開放的な間取り(吹き抜け、リビング階段など)を希望する 温度差が生じにくい

     
     

    まとめ|全館空調はこんな人におすすめ

    全館空調はこんな人におすすめ

     

    全館空調は、家全体を快適な温度と空気環境に保つ高性能な空調システムです。
    「一年を通して家中どこでも快適に過ごしたい」「健康や空気の質にもこだわりたい」「省エネで効率的な暮らしをしたい」といった方におすすめです。
     
    特に、高気密・高断熱住宅と組み合わせることで、その性能を最大限に発揮し、エネルギーのムダを抑えながら快適な室内環境を保つことができます。

     

    また、デザイン性やメンテナンスの手間を軽減したい方にとっても、全館空調は理想的な選択肢の一つと言えるでしょう。
     
    家族の健康と快適な暮らしを重視する方には、全館空調の導入をおすすめします。