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断熱材の新常識!
セルロースファイバーと他素材を比較
近年、環境にやさしい断熱材として耳にすることの多い【セルロースファイバー】ですが、断熱性・防音性・調湿性にも優れた新時代の断熱材として注目が集まっています。本記事では、快適な住宅環境に大きく貢献するセルロースファイバーについて、分かりやすく解説していきます!
セルロースファイバーとは?
セルロースファイバー(Cellulose Fiber)は、木材パルプや古紙などの植物由来の繊維から作られる素材で、特に住宅の断熱材としてよく利用されます。自然由来の特性を活かし、高い断熱性・調湿性・防音性・防火性など、多くのメリットを持つのが特徴です。
①セルロースファイバーの高断熱性の秘密は「繊維構造」!
セルロースファイバーの繊維は、細かい空気の層をたくさん含んでいます。この「空気の層」が、熱の伝わりを防ぐ大きな役割を果たします。
熱は伝導・対流・放射の3つの方法で伝わりますが、セルロースファイバーはそれらすべてに対して効果的に機能します。
熱伝導を抑える
繊維の隙間に空気を多く含んでいるため、熱の移動が遅くなり、外気の影響を受けにくくなります。
対流を防ぐ
細かい繊維が絡み合っており、空気が動きにくい構造のため、温かい空気が上昇する対流現象を抑制します。
放射熱を遮る
セルロースファイバーは繊維の密度が高く、外部からの輻射熱(放射による熱移動)を遮る働きを持っています。
このため、冬は暖かく、夏は涼しい快適な室内環境を保つことができます!
②セルロース繊維の吸放湿性で抜群の調湿性能!
セルロースファイバーは、木材由来の繊維でできているため、木が持つ「吸湿・放湿」の特性をそのまま引き継いでいます。
【湿気が多いとき → 水分を吸収する】
梅雨や夏場など湿度が高いとき、セルロースファイバーは空気中の水分を吸収し、室内の湿度上昇を抑えます。
【乾燥しているとき → 水分を放出する】
冬の乾燥した環境では、吸収した水分をゆっくり放出し、室内の湿度を適度に保ちます。
このように、「湿度の調整機能」があるため、カビの発生を抑えたり、結露を防ぐ効果があります。
③ 多孔質構造で優れた防音性を発揮!
セルロースファイバーは、細かい繊維が密集してできた「多孔質構造」を持っています。この構造によって、音のエネルギーを効果的に吸収し、防音効果を発揮することができます。
具体的には、以下の2つの性質によって音を遮断します。
【音の吸収(吸音効果)】
セルロースファイバーの繊維の隙間に音が入り込むと、音の振動が繊維によって分散・減衰されます。これにより、室内の反響音(残響)が減り、静かな環境を作り出すことができます。
【音の遮断(遮音効果)】
繊維が密集しているため、外部からの騒音や室内の音漏れを抑える効果があります。
このため、セルロースファイバーは住宅だけでなく、映画館やオフィス、音楽スタジオなどの防音対策にも利用されています。
④ ホウ酸加工処理で実現!高い防火性
セルロースファイバー自体は可燃性の素材ですが、断熱材として使用される製造過程でホウ酸(ホウ素化合物)を加え難燃性を高めることができています。
【ホウ酸が燃焼を抑制】
ホウ酸は、燃焼時にガスの発生を抑え、酸素供給を遮るため、炎が広がりにくくなります。
【炭化作用がある】
万が一、火がついた場合でも、セルロースファイバーはすぐに燃え広がるのではなく、表面が炭化して内部まで燃えにくくなります。
これにより、住宅火災の際の延焼を防ぐ効果が期待できます。
断熱材の種類と比較
断熱材にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や性能が異なります。ここでは、代表的な断熱材とセルロースファイバーを比較し、どのような違いがあるのか詳しく解説していきます。
主な断熱材の種類と特徴
断熱材の種類 | 主な原料 | 断熱性 | 調質性 | 防音性 | 防火性 | 環境負担 | 価格 |
セルロースファイバー | 古紙・木材パルプ | ◎ | ◎ | ◎ | ○(難燃処理済) | 低い(天然素材) | 中 |
グラスウール | ガラス繊維 | ○ | △ | ○ | ◎ | 中 | 低 |
ロックウール | 玄武岩などの鉱物繊維 | ○ | △ | ○ | ◎ | 中 | 低 |
ウレタンフォーム(硬質・吹付) | ポリウレタン樹脂 | ◎ | ✕ | △ | △ | 高い(石油由来) | 高 |
ポリスチレンフォーム(EPS・XPS) | 発泡スチロール | ◎ | ✕ | △ | △ | 高い(石油由来) | 中 |
フェノールフォーム | フェノール樹脂 | ◎ | ✕ | △ | ◎ | 高い(石油由来) | 高 |
1. セルロースファイバー(Cellulose Fiber)
主原料:古紙や木材パルプ
特徴:
・空気を多く含む繊維構造で断熱性が高い
・吸湿・放湿機能があり、結露やカビを防ぐ
・多孔質構造により、防音性に優れる
・ホウ酸処理で難燃性を持つ
・製造過程で環境負荷が低く、リサイクル可能
○適した用途:住宅・オフィス・スタジオの断熱・防音対策
メリット:断熱・調湿・防音に優れ、エコ素材
デメリット:施工には専用機械が必要、価格がやや高め
2. グラスウール(Glass Wool)
主原料:ガラス繊維(リサイクルガラスなど)
特徴:
・コストが安く、広く普及
・断熱性は高いが、調湿性は低い
・吸音性があり、防音効果も一定レベル
・耐火性が高く、燃えにくい
○適した用途:住宅・ビル・工場の断熱材
メリット:安価で施工しやすい、燃えにくい
デメリット:湿気に弱く、結露が発生しやすい(カビのリスク)
3. ロックウール(Rock Wool)
主原料:玄武岩やスラグ(鉱物繊維)
特徴:
・断熱性と防音性が高い
・耐火性が非常に高い(1000℃以上でも燃えない)
・グラスウールよりも防音性に優れる
○適した用途:住宅・工場・ビルの耐火断熱材
メリット:耐火性能が非常に高い、防音性も良い
デメリット:吸湿しやすく、湿気対策が必要
4. ウレタンフォーム(硬質・吹付)(Polyurethane Foam)
主原料:ポリウレタン樹脂(石油由来)
特徴:
・発泡体が空気を閉じ込め、高い断熱性を持つ
・吹き付け施工ができ、隙間なく充填可能
・調湿性はなく、湿気がこもると劣化する
○適した用途:高断熱住宅・冷蔵倉庫・工場
メリット:断熱性が非常に高く、施工性が良い
デメリット:コストが高い、紫外線や湿気で劣化しやすい
5. ポリスチレンフォーム(EPS・XPS)(Expanded Polystyrene, Extruded Polystyrene)
主原料:発泡スチロール
特徴:
・軽量で施工がしやすい
・断熱性は高いが、防音性や調湿性は低い
・耐水性があり、湿気を吸わない
○適した用途:住宅の壁・屋根・基礎部分の断熱
メリット:湿気に強く、耐久性が高い
デメリット:防音性が低く、可燃性がある
6. フェノールフォーム(Phenolic Foam)
主原料:フェノール樹脂
特徴:
・断熱性が非常に高い
・燃えにくく、耐火性能が高い
・吸水性が低く、湿気の影響を受けにくい
○適した用途:高性能断熱住宅・商業ビル
メリット:優れた断熱性と耐火性
デメリット:価格が高い、施工が難しい
どの断熱材を選ぶといいの?
断熱材にはさまざまな特徴があり、どの断熱材を選ぶべきか迷うこともあるでしょう。
選び方のポイントとしては、性能や価格だけでなく、住宅環境や重視する要素に合わせて選ぶことが重要になります。
目的別おすすめ断熱材一覧
目的 | おすすめの断熱材 |
コストを抑えつつ一般的な断熱をしたい | グラスウール |
防音効果も求めたい | セルロースファイバー / ロックウール |
調湿性能が必要で、結露対策をしたい | セルロースファイバー |
高断熱な家を作りたい | ウレタンフォーム / フェノールフォーム |
耐火性が最重要 | ロックウール / フェノールフォーム |
湿気の多い場所(地下など) | ポリスチレンフォーム |
セルロースファイバーのメリット・デメリット
セルロースファイバーは、断熱性・調湿性・防音性に優れた自然由来の断熱材として注目されていますが、メリットだけでなくデメリットもあるため、導入前にしっかり理解しておくことが重要です。
セルロースファイバーのメリット
断熱材の比較表
比較項目 | セルロースファイバー | グラスウール | ウレタンフォーム | ポリスチレンフォーム | ロックウール |
断熱性(熱伝導率) | 0.040~0.043W/m・K(グラスウールと同等以上) | 0.032~0.050W/m・K | 0.024~0.034W/m・K(高断熱) | 0.028~0.036W/m・K(高断熱) | 0.038~0.045W/m・K |
防音性 | 高い(グラスウール以上、他の発泡系より優秀) | 一定の防音性能あり | 低い | 低い | 非常に高い(セルロースと同等) |
防火性 | 燃えにくいが完全な不燃材ではない | 完全不燃(無機素材) | 燃えやすい(有毒ガス発生) | 燃えやすい(有毒ガス発生) | 完全不燃(無機素材) |
シロアリ対策 | 必要なし(ホウ酸処理で対策済み) | 必要 | 必要 | 必要 | 必要なし |
環境負荷 | 低い(再生紙を使用) | 中程度 | 高い(石油由来) | 高い(石油由来) | 中程度 |
夏は涼しく、冬は暖かい高い断熱性能
セルロースファイバーは木質繊維が絡み合い、多くの空気を含んでいるため、熱伝導率が低く、高い断熱性能を発揮します。冬は室内の暖かい空気を逃がさず、夏は外気の熱を遮断することで、一年中快適な室内環境を保ちます。さらに、断熱効果が安定しているため、結露の発生や温度ムラが少なく、快適で省エネな住空間を実現できるのも大きな魅力です。
調湿性に優れ、結露やカビを防ぐ
セルロースファイバーは湿気を吸収・放出する性能を持っています。そのため、湿気がこもりにくく、結露やカビの発生を抑える効果があります。湿気が多い時には吸収し、乾燥時には放出する調湿機能を持ち、室内の湿度を快適に保ちます。グラスウールなどの繊維系断熱材とは異なり、内部結露が発生しにくいため、カビや腐食のリスクを軽減できます。特に木造住宅との相性が良く、建物の耐久性を向上させる効果も期待できます。
高い防音性
セルロースファイバーは多孔質構造を持ち、音を吸収しやすいため、防音性能が高いです。外部の騒音を遮断し、静かな室内環境を実現する高い防音性能を持っています。さらに、室内の音漏れを軽減することでプライバシーを守る効果も期待できます。ロックウールと並び、防音性に優れた断熱材の一つとして、多くの住宅や建築物で採用されています。
比較:グラスウールよりも防音性能が高く、ウレタンフォームやポリスチレンフォームより優秀
防火性能が高い
セルロースファイバーはホウ酸処理されており、自己消火性を持つため、燃え広がりにくい特性を持ちます。さらに、燃焼時に発生する有毒ガスが少ないため、安全性が高いのも特徴です。対照的に、ウレタンフォームなどの断熱材は燃焼時に有毒ガスを発生するリスクがあるため、防火性能を重視する場合はセルロースファイバーが適した選択肢となります。
シロアリ・害虫・カビに強い
セルロースファイバーはホウ酸処理によって、シロアリや害虫、カビの発生を防ぐ効果があります。木造住宅の大敵であるシロアリを防ぎ、カビや菌の繁殖を抑える効果があります。また、害虫が住みつきにくい特性も持ち、快適で衛生的な住環境を維持しやすくなります。
環境に優しく、エコな素材
セルロースファイバーは新聞紙や古紙をリサイクルして作られているため、環境に優しい断熱材です。省エネ効果が高く、CO₂削減に貢献する環境に優しい断熱材です。石油由来のウレタンやポリスチレンと比較してエコであり、施工時の化学物質の放出が少ないため、シックハウス対策にも適しています。
セルロースファイバーのデメリット
断熱材の比較表
比較項目 | セルロースファイバー | グラスウール | ウレタンフォーム | ポリスチレンフォーム | フェノールフォーム |
DIYの可否 | 不可(専門業者が施工) | 可能(DIY施工が容易) | 不可(専門施工が必要) | 可能(DIY施工が容易) | 不可(専門施工が必要) |
コスト | 高め(ウレタンほどではないが高価) | 低コスト(安価) | 高価 | 中程度 | 非常に高価 |
重量 | 重め | 軽量 | 非常に軽量 | 軽量 | 軽量 |
耐水性 | 調湿性あり(適度な耐水性) | 吸水しやすい | 吸水しにくい | 耐水性が高いが調湿性ゼロ | 耐水性が高い |
調湿性 | 高い | 低い | なし | なし | なし |
施工に専門技術が必要(DIYが難しい)
セルロースファイバーは、吹き込み施工が基本のため、専用の機械や技術が必要になります。セルロースファイバーは優れた断熱材ですが、施工ミスがあると十分な断熱性能を発揮できません。一般的なDIYでは施工が難しく、プロの業者による適切な施工が必要です。また、場合によっては施工に時間がかかることもあります。
初期コストがやや高め
セルロースファイバーは高性能な分、材料費・施工費が高い傾向にあります。グラスウールと比較すると初期コストが1.5〜2倍かかります。しかし、優れた断熱性能により光熱費の削減につながるため、長期的に見るとトータルコストは抑えられるメリットがあります。
重量があるため、施工場所によっては注意が必要
セルロースファイバーはグラスウールなどに比べて重いため、天井や屋根部分の施工時には注意が必要です。セルロースファイバーは重量があるため、施工時には適切な支持材が必要です。特に屋根裏や天井部分では、荷重に耐えられる設計を考慮することが重要です。
水に弱い(施工後の漏水に注意)
セルロースファイバーは吸湿性があるため、雨漏りや配管トラブルで水に濡れると、性能が落ちる可能性があります。施工後の漏水や水濡れに注意が必要です。万が一濡れてしまうと、断熱性能が低下し、場合によっては交換が必要になることもあります。
セルロースファイバーは高性能で環境にも優れた断熱材ですが、住宅環境や性能に合わせて、メリットとデメリットもしっかり理解した上でどの断熱材を選ぶかを検討するのが重要ですね。
セルロースファイバー設置時の注意点
セルロースファイバーの設置作業にはいくつかの重要な注意点があります。これらを把握しておくことで、効果的な断熱性能を発揮し、安全で快適な住環境を実現することができます。セルロースファイバー設置時の注意点をいくつかのポイントに分けてご紹介します。
1.施工業者の選定
設置作業は経験豊富な業者に依頼するのが理想です。専門知識を持つ業者に任せることで、施工の品質が確保されます。
2.適切な換気
セルロースファイバーは吸湿性が高いため、湿気や結露を避けるために十分な換気が必要です。設置場所が乾燥した状態であることを確認しましょう。
3.施工面の清掃
設置面が清潔で乾燥していることを確認してください。ホコリや油分があると、接着力が弱まることがあります。
4.耐水性の確保
セルロースファイバーは水分に弱いため、設置場所が雨水や湿気にさらされることがないように、十分な防水対策を行うことが必要です。
5.適切な密度
セルロースファイバーの密度は、断熱効果に直結します。設置時に均等に吹き込むことが大切です。もし隙間がいくつもできてしまうと、断熱性能が低下するだけでなく、内部で結露が発生しやすくなります。隙間ができないように、必要に応じて専用の吹き込み機を使用しましょう。
6.防火対策の確認
セルロースファイバーはホウ酸処理されていて難燃性ですが、施工後に火が通る経路がないかチェックしましょう。
7.設置後の乾燥
セルロースファイバーを設置した後は、完全に乾燥させることが重要です。湿気を含んだ状態で密閉すると、カビや腐敗の原因になることがあります。また、きちんと充填されているか、専用のチェックツールやサーモグラフィーで確認するのがおすすめです。
適切に施工すれば、セルロースファイバーは省エネルギーで快適な住環境を作り、湿気やカビの発生を防ぎます。また、経験豊富な専門業者に依頼することで、施工ミスを避け、効果を最大限に引き出すことができます。セルロースファイバーは、優れた断熱性と環境への配慮から、今後ますます注目される素材でしょう。
断熱性能が暮らしを変える!冷暖房に頼らない快適な住まいづくり
優れた断熱性能を備えた住宅は、冷暖房に頼らず快適な室温と湿度を維持でき、エネルギー効率の向上と光熱費の削減が期待できます。初期コストはやや高くなるものの、冷暖房費を抑えられるため、長期的には経済的な選択肢となるでしょう。ただし、断熱性能を最大限に活かすには施工の質が重要です。不適切な施工では隙間から熱が逃げ、効果が十分に発揮されません。
確実な施工を行う信頼性の高い施工会社に依頼することで、長期的に快適で経済的な住環境を実現できます。