CLEAN ENERGY
クリーンエネルギー
太陽光発電設置の基礎知識
【義務化の動きも解説】
最近は街中でも一般住宅の屋根に太陽光発電のパネルが設置してあるのをよく見かけるようになりました。太陽光発電は、どんな仕組みで発電されているのか知っていますか?
この記事では、太陽光発電の仕組みや設置のメリット・デメリットをわかりやすく解説します。更に、設置費用を抑える補助金の活用法や、義務化の動きについても詳しくご紹介。住宅購入前に知っておきたい情報をまとめました。
2019年度の日本の総発電量のうち、再生可能エネルギーは18%を占めています。その再生可能エネルギーの中でも37%を占める重要なエネルギー源が太陽光発電です。再生可能エネルギーをもっと普及させるためには、家庭でも発電所でも幅広く使える太陽光発電を更に広めていくことが必要となります。
太陽光発電の義務化について
近年、太陽光発電は身近な存在になりつつあります。実は「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」という内容で2021年10月に第6次エネルギー基本計画で閣議決定がされています。また、経済産業省(METI)は、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの普及促進を重要な政策目標の一つに掲げているんです。
更に東京都で、太陽光発電の設置が2025年4月以降に新築される戸建住宅に義務化する動きの後押しもしています。太陽光発電設置の義務化を宣言、もしくは検討している主な自治体は、東京都、京都府、神奈川県川崎市です。その他にも群馬県や横浜市にも再生可能エネルギー普及のため、太陽光発電設置の義務化に関する動きがあります。
今回の太陽光発電設置の義務化はテレビやSNSなどのメディアで取り上げられ話題を集めました。しかし、設置義務対象となる建物や太陽光発電の出力などの様々な条件は各自治体によって変わってきます。対象地域にお住まいの方や転居の予定がある方は規制や条例の内容を把握しておくと良いでしょう。
太陽光発電の仕組みをわかりやすく解説
太陽光発電は「太陽電池」が集まってできたパネルのことです。太陽電池とは、電気を貯める一般的な「電池」ではなく、太陽の光をエネルギーに変換する発電機のことです。
この太陽電池は「n型半導体」と「p型半導体」と呼ばれる2種類の半導体を貼り合わせてつくられています。そこに太陽の光が当たると、太陽電池のn型半導体にマイナスの電気を帯びた電子(-)が、p型半導体にはプラスの電気を帯びた正孔(+)が集まります。そして、2つの半導体を繋いでいる導線を伝って電子(-)が正孔(+)の方に移動し、この流れを利用して電気を取り出すのが太陽光発電の仕組みです。
こうして発生した電力を光起電力と呼び、このような仕組みを「光起電力効果」と言います。
太陽光で作られた電気は、パワーコンディショナーによって家庭用の交流電流に変換され、家電製品や照明などに使われます。また、蓄電池を使うことで、発電量と消費量を調整し、効率的な電力利用が可能です。蓄電池は、太陽光発電システムで発生した電力を蓄えておくための装置です。太陽光発電で生み出された電力が家庭で使い切れない場合は、蓄電池に充電されます。夜間や天候が悪く発電量が不足する場合、蓄えた電力を放電し、家庭で利用することができます。
太陽光発電を設置するメリット
次は太陽光発電を設置することで得られるメリットを見ていきましょう。これらは家庭の経済面や環境保護、生活の利便性に大きく寄与します。
- 電気料金の削減
太陽光発電を設置することで、何もしなくても電力が生み出されます。発電した電力で自宅の電気を賄い、電力会社からの電気購入量を減らすことができます。昼間の発電量が多い場合は、余った電力を電力会社に売電することで収入を得ることも可能です。
更に、オール電化にすればこれまで使っていたガスも発電した電気で賄うことができるようになります。ガス代の削減にも繋がります。 - CO2削減で環境に貢献
太陽光発電最大の特長は、エネルギー源が枯渇しないことと、クリーンであるという点です。太陽光発電は発電時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策に貢献できます。再生可能エネルギーの利用を促進し、持続可能な社会の実現に役立ちます。 - 災害時の非常用電源
太陽光発電システムは蓄電池と組み合わせることで、停電時にも電力の確保ができます。災害が頻発する地域では、安心感を得られる重要な対策になります。
停電により電気供給が電力会社から止まってしまった場合にも「自立運転機能」に切り替えることで、太陽光発電システムで作った電気を使用することができます。 - エネルギー価格変動への耐性
燃料を必要としないため、資源価格や供給不足の影響を受けません。一度設備を導入してしまえば、天候に応じた変動はあるものの、基本的に「無料のエネルギー」で発電が可能です。
また、余った電力を売電できる場合は、電力価格が高騰すると売電価格も高くなる可能性もあります。これにより、エネルギーコスト全体のバランスを取ることができるでしょう。太陽光発電はエネルギーの自給自足を可能にし、家計を守る強力な手段となります。 - 住宅価値の向上
太陽光発電設備を導入することで、環境性能が高い住宅としての評価が上がり、不動産価値の向上が期待されます。電気料金の削減や売電収入が期待できるため、中古住宅購入希望者にとって経済的なメリットが大きいのではないでしょうか。需要が高まることで、不動産市場における売却価格が上昇する可能性があります。
また、太陽光発電を導入している賃貸物件は、入居者の光熱費負担を軽減することから人気が高まります。賃料を適切に設定することで、投資用物件としての価値も上がるでしょう。 - 補助金や税制優遇
- 初期費用が高額
- 天候や地域に依存する発電量
- メンテナンスと劣化
- 設置場所に制約がある
- 廃棄時の課題
- 売電価格の下落
経済産業省は、太陽光発電設備の導入を支援するために、以下のような補助金や税制優遇措置を提供しています。補助金制度等を活用することで、初期費用も軽減することができます。また、太陽光発電を設置することで、税金面でも優遇を受けることができます。
例えば、省エネ改修を行った住宅には、一定期間、固定資産税が軽減される措置があります。太陽光発電を設置する際に住宅ローンを利用した場合、住宅ローン減税の対象になることも。特に、省エネ性能が向上した住宅は、減税額が増える可能性もあります。こうした補助金と税制優遇は基本的に併用が可能です。ただし、一部の補助金や制度では併用が制限される場合があるため、必ず事前に確認をしておきましょう。
これらのメリットにより、太陽光発電は経済的にも環境的にも価値のある選択肢として注目されています。設置を検討する際には、これらのポイントをぜひ考慮してみてください。
太陽光発電のデメリット
太陽光発電には多くのメリットがある一方で、設置や運用に際して注意すべきデメリットも存在します。主なポイントを見ていきましょう。
太陽光発電システムの設置には、設備費用や工事費用などの初期投資が必要です。
設置する条件にもよりますが、一般的な家庭用システムの導入には100万円〜300万円程度かかる場合があります。更に、太陽光発電システムのコストを回収するには、長期間の使用が前提となります。電気代の削減や売電収入を考慮しても、10〜15年以上回収にかかるケースが多いです。
太陽光発電は日照時間や天候の影響を強く受けます。曇りや雨、積雪時には発電量が大幅に減少し、夜間は発電できません。また、日照条件が悪い地域では十分な発電が期待できないことがあります。
太陽光パネルや関連機器は長期間使用可能ですが、実は定期的な点検やメンテナンスが必要になってきます。特にパネルに汚れが溜まると発電効率が低下してしまうため、清掃や点検を行う必要があります。更に、架台と呼ばれるパネルを設置するための土台があり、ボルトや固定金具の緩みを定期的に点検する必要があります。修理費用を損害保険でカバーできたり、メーカー保証が使えたりするケースもあります。
太陽光パネルの設置には広いスペースが必要で、築年数や構造、屋根の材質や、家の向き、角度、屋根の強度も影響してきます。木々や隣家の影など、日射を遮る要因があると発電効率が低下してしまいす。賃貸住宅や高層マンションでは設置が難しい場面も出てくるでしょう。
太陽光パネルは耐久性が高いものの、使用寿命を迎えた際の廃棄処理が問題になることがあります。特に、大量な導入が進んでいる現在、将来的に廃棄物としての管理が重要な課題となる可能性があります。
FIT(固定価格買取制度)に基づく売電価格は、年々引き下げられています。将来的に売電収入が期待したほど得られなくなる可能性も考えられます。
これらのデメリットを踏まえ、太陽光発電の導入を検討する際には、以下の点に注意すると良いでしょう。
・助金や税制優遇を最大限活用する
・発電量が十分見込める地域・設置環境を選ぶ
・定期的なメンテナンス計画を立てる
・蓄電池を併用して発電量の波を補う
太陽光発電のデメリットを正しく理解し、適切に対応することで、設置後の満足度を高めることが可能です。
太陽光発電設置の費用を抑えるコツ
太陽光発電を設置するには高額な費用がかかることがわかりました。次はできる限り負担を軽減し、お得に設置するコツをご紹介します。
先ほどメリットの部分で記載した、太陽光発電の設置には国や地方自治体の補助金制度を活用します。ただし、補助金の内容は地域や年度によって異なるため、自治体の公式サイトや工事業者を通じて最新情報を確認してください。補助金は色んな種類があり、予算や対象となる要件、スケジュールなどがそれぞれ異なるため、必ず活用できるとも限りません。事前にインターネットで調べたり、工事業者や自治体へ確認して、情報収集をしましょう。更に、年度末や補助金制度の終了間際は、業者が割引キャンペーンを行うことがあります。販売業者や設置業者に、キャンペーンや特典について問い合わせてみましょう。
また、工事業者によって費用やサービス内容が異なるため、複数社から見積もりを取得し、比較検討しましょう。価格だけでなく、保証内容やアフターメンテナンスも考慮してくださいね。
太陽光発電パネルにはたくさんの種類があります。パネルがついている屋根を見てみると色やサイズが様々なことがわかりますね。パネルの種類(単結晶、多結晶、薄膜)によっては価格と性能が異なってくるのでチェックしましょう。単結晶パネルは高性能で発電効率が高いですが、価格も高めです。コストを重視するなら、発電効率が若干劣る多結晶パネルや薄膜パネルも検討してください。
初期費用を抑えることだけでなく、電気料金の削減効果や売電収入を含めた長期的な費用対効果も考慮しましょう。設置費用を分割で支払うローンも選択肢に入れることで、月々の負担を軽減できますよ。
これらの方法を組み合わせて実践していくことで、太陽光発電システムの設置費用を効果的に抑えることが可能です。
住宅購入時に検討すべき太陽光発電設置の重要性
住宅購入は人生の大きな決断であり、将来の生活基盤を築く大切な機会です。このタイミングで太陽光発電システムの設置を検討することは、経済的・環境的な面で多くのメリットがあります。
太陽光発電は、電気料金削減や売電収入を通じたランニングコストの軽減、環境に優しいエネルギー活用、災害時の安心感など、日常生活に多大な恩恵を提供します。また、設置義務化の動きが広がりつつある現在、住宅購入時にこの選択を視野に入れることは、未来を見据えた賢い選択と言えます。
購入する住宅が太陽光発電の設置に適しているかを確認し、補助金や優遇制度を活用することで初期費用を抑えつつ、長期的な投資効果を得ることができます。住宅購入を検討する際は、太陽光発電の設置について積極的に考えることをおすすめします。